保育士の裏側

元保育士が綴る保育士のなり方や仕事内容から人間関係など裏側をお伝えします。

潜在保育士とは?復職しない大きな2つの理由。解決策はある?

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いつかは保育に戻りたいな…なんて淡い期待を持っている私ではありますが、今は結局元サヤ。

よくあるタイプの会社員でデスクワークの日々を送っています。

 

PCと電卓と細かい文字・数字とにらめっこ。
しんどいことも多いけど、これはこれでやりがいを感じて毎日を過ごしています。

 

ただこれ、保育士資格を持ちながら、結局その資格を職務として活かしていない状態。
現在の私は、立派な「潜在保育士」の1人してカウントされているのです。

 

「増え続ける待機児童問題に対して、潜在保育士の現場復帰が急務である」というのが、どうやら国の方針の様子。
その線で言うと、相反する行動をとっているわけですね(^^;
しかも、「国をあげて取り組むべき課題」ということとなると、なかなか大多数の方が潜在保育士となっているんだろうなと予想できます。

 

しかし、その方々が「はい、ただちに保育現場に復帰します!」と言い難い状況であるのは確かなようです。

 

何故、潜在保育士になってしまったのでしょうか?(゜_゜)

 

今回は、保育士が「潜在保育士」になってしまう大きな理由にスポットを当ててみましょう。
その理由を知れば、「これさえどうにかできれば…!!」という現場復帰への糸口も見えてくるかも知れませんね。

 

 


潜在保育士っていったい何?

「潜在」というからには、どこかに隠れてひそんでいる保育士…と思いがちですが、そういうわけでもありません(^^;

 

保育士資格を持ちながらも、保育関連の仕事に携わっていない人のこと。
特に、保育園やこども園などで日常的に子どもを保育することに携わっていない人のこと潜在保育士と呼んでいます。
その数、なんと全国に70万人以上居ると推計されているのです。

 

待機児童解消に必要な保育士の数は?

現在の安倍内閣の政策である、待機児童ゼロを目指す「待機児童解消加速化プラン」では、2017年度末までに、保育園などで預かる子どもの定員をあと40万人増やすとしています。
そのためには、保育園などの預かり施設を増設するだけでなく、保育士の確保が避けて通れない課題となっています。

 

必要となる保育士の数は、2017年度末までに約46万人と見込まれていますが、このままの状態では、結局8万人程度の保育士が不足するとされています。


何故、潜在保育士を現場復帰させたいの?

あと3か月で8万人の保育士確保とは…安倍首相もなかなか無茶を仰るものです(;´∀`)
おそらく、このプランの達成は非常に困難であろうと思われるわけですが、そうだとしても政府としては諦めるわけにはいきませんよね。

 

しかし、この短期間で、8万人を新たに保育士にし、全員を保育施設に勤務させるということはほぼ不可能に近い。
…となると、保育士資格を持ちながらも保育の仕事をしていない人を引っ張り込む方が、手っ取り早いわけです。

 

資格のみならず、そこにさらに、過去に保育士として勤務した経験があるのならば、即戦力としても期待ができますよね。
保育現場からすれば、喉から手が出るほど欲しい人材であるのです。


潜在保育士が復職しない理由

ただ、国や保育現場の考えとは裏腹に、潜在保育士には潜在保育士となった理由がきちんと存在します。
また、保育の仕事がしたいと望むようになれば、国の政策などに関係なく、自ら行動を起こされることでしょう。

 

かく言う、私が潜在保育士となった理由は、一言で言うならば「元の職場にお声がけいただいたから」というものでした。
細かいことを言うとキリがないので割愛しますが、例えるのならば、地元から遠く離れた土地に居たところを、実家の親に呼び戻された。という感覚でしょうか。

 

なので、決して、保育の現場を心底嫌になって退職したというわけではないのです。
寧ろ、機会があればもう一度保育現場にてお役に立つような仕事をしたいとは考えています。

 

ただ、私のように心穏やかに保育現場を去って行った人ばかりではないようです。
1人ひとり様々な事情が重なっているようですが、大別すると、次の2つの理由が、潜在保育士を生む大きな理由となっているようです。

 

給料が低い


厚生労働省職業安定局が公表しているデータによると、保育士職へ就業を希望しない理由として「賃金が希望に見合わない」という理由が半数近くに上っているほど。
多くの人が、給与の低さを理由に保育現場から去ることとなっているようです。

 

「仕事」と言う限りは、それを生業として生計を立てるわけです。
無償のボランティアではありません。

 

当然ながら、その労働の対価となる給料が支払われますが、その給料の低さがネックとなっているようです。

 

特に、保育士の場合はそれが顕著となっています。

全年齢を対象としたフルタイム勤務者の月額平均給与額は、なんと19万円。
これは、全産業の29万5000円というところから10万円も低いのです。

 

しかも、手取り月収15万円以下との回答が半数近く居るというのも特筆すべきポイントでしょう。
これでは1人で食べていくのがやっと…という考えになるのも無理はないかも知れません。

 

さらに言えば、その仕事量の多さも給与額に明らかに見合っていないという点も否めません。
子どもの生活を見守り保育を行うことの他にも、OL並みの事務仕事芸術家ばりの制作クレーム処理班以上の保護者との対話…などなど、枚挙にいとまがありません。
持ち帰りでの仕事も当然に多くなり、気づけば「ずっと仕事をしている状態」という保育士も少なくありません。

 

一部の保育士の話では「時給換算したら300円くらいじゃないかな?」などというのも耳にしたことがあるほど。
人命を預かりながらその周辺を支えるという大切な仕事を引き受けるにしては、あまりにも安価ではないでしょうか。


「保育への情熱」と「子どもの笑顔」だけでカバーしろと言うにはあまりにも酷な話です。


人間関係

職場は、1日の大半を過ごす場所となります。
働くうえでの環境は、非常に重要なものとなりますよね。

 

毎日接している子どもは、大きな敵ではありません。
たとえ生意気を言ったり、身体的な暴力行為があったとしても、それは発達の途上にあるから。
「幼児のやることだから…」とこちらも心持ち穏やかに見守ることができるでしょう。

 

問題となるのは、大人たちです。
たとえ口うるさい面倒な保護者や、反対に保育士を無視する保護者が居たとしても、一時的には辛いものの、子どもが卒園すれば自然とその関わりは無くなります。

 

残るは、同僚や上司。
これが一番の厄介者ではないでしょうか。

 

保育現場は、概ね女の世界です。
男性保育士こそ徐々に増加しつつありますが、まだ全体の1割にも満たないほどであるのです。

 

「女の園」と言うと聞こえは良いものですが、その分、「好き放題」をはたらく人が絶対に現れるものです。
ガキ大将さながらに、自分の思うとおりに事を運ばせようとしたり、自身の好き嫌いだけで対応を変えたりします。

 

そうすると、理不尽に八つ当たりをされたり、激しく叱責してきたかと思えば無視されたり、はたまた「新人いびり」なども横行します。

中には、いわれのない噂を広められてしまったり、閑職に追いやられたり、ややこしい問題の責任を全てなすりつけられたり…あらゆる手段で「意地悪」を仕掛けられることもあるのです。


こんなことが続けば、どんなに強靭なメンタルを持っている人でも保育現場を離れたくなるでしょう。

 

そんなことをしておきながら、保育している子どもたちには「みんな仲良く遊ぶんだよ♪」などと言っているのですから、開いた口がふさがりませんよね(^^;

 

職場の人間関係は、外からでは実態が掴めません。
入職して、同僚・上司と実際に関わってみなければ、なかなかわかりにくいことでしょう。

 

すべての保育施設の人間関係が劣悪!というわけでは絶対にありませんが、一度悪い所に当たってしまうと「もう保育士にはなりたくない(´;ω;`)」という気持ちになるのも無理はないでしょう。

 

潜在保育士の解決策はあるのか?

では、国の思惑どおりに、潜在保育士を現場に引き戻す方法はあるのでしょうか?

 

実は、厚生労働省の公表している調査結果でも、「保育士の入職者を拡大するためには処遇改善や勤務環境の改善に取り組み、職場として魅力を高めることが必要」と、しっかりと答えを出しています。
そして、この課題が乗り越えられた折には保育士として就業したいと答えている人は、60%以上にも上るのだとか。
これは期待できそうですね。

 

しかし、具体的にどうするのでしょう?
そこに関しては明記がありません。

 

ここからは、私の独断と偏見です(;´∀`)
潜在保育士の方々がどうしたら「保育現場に復帰したいな♪」と少しでも思えるのか?を考えてみました。
「これができたら苦労は無いよ!」ということばかりですが、実現出来たら良いなということばかりのはずです。

 

給料を全産業の平均値に合わせる

給料が多ければ多いほど良いのは当たり前です。
まして、保育士という、子どもとその家族に対して責任のある仕事をしているわけです。
それを、月給20万円にも満たない報酬で…というのはあまりにも無慈悲に思えてなりません。

 

せめて、全産業の平均給与額である29万円程度の報酬は受け取るに値するのではないでしょうか。

 

ただ、問題は、この給与をどこから捻出するのか?というところにあります。
政府や地方自治体などは、実際には補助金などを出して「人件費に充てるように」としているようなのですが、現場保育士の手元にはあまり渡っていない様子です。

 

一体どこに消えているのでしょうね?( ̄▽ ̄;

 

保育園自体が、運営に対して何らかの対策を講じなければならないポイントでしょう。

 

もっと「開かれた保育園」に!

人間関係が陰湿になるのは、やはり、保育園がどこか閉鎖的な空間だからではないでしょうか。

 

昨今では、防犯上のこともあり、どうしても保育園自体が内に内にと「閉じこもった」運営をしがちです。
外からの目が無いとなると、その中の人は、自分の意のままに「お山の大将」のように振る舞う人が必ず出てきてしまうのではないでしょうか。
そうなってしまっては、保育士も、そこで預かっている子どもたちもお互いに不幸でしかありません。

 

そこで、保育園がもっと地域の中心となるような立ち居振る舞いをすれば良いのではないでしょうか。
運動会・生活発表会といった行事を公開にしたり、入園児以外にも地域の子育て世帯を積極的に招いてイベントを開くなど、交流の機会を図ることで常に外の空気に触れやすい環境をつくることはできます。

 

さらに、ホームページやSNSを活用し、対外的にアピールすることも、保育士の「見られている」という意識を高めることができるようになります。
また、職員が保育系の学会や研修会などに参加し、そこで得たことを全員でシェアできる環境を整えるのも良いでしょう。

 

ただ、何も無くとも忙しい状況にある保育現場で、ここまでのことに手が回るか?というのは大きな課題です。
人員不足にあえいでいる中ではなかなか困難を極めるでしょう。

 

しかし、その取り組みが潜在保育士の目に留まれば、「ここでならまた保育士になりたい!」という考えが芽生えるかも知れません。
大きなチャンスをはらんでいるとあっては、取り組まない理由にはならないのではないでしょうか。

 

事務職員を登用する

保育士が保育に専念できるように整えるために、膨大な事務処理や、季節ごとに変わる壁面の制作などをこなすための職員を配置するのです。

 

私が知る限りでは、保育士はただでさえパソコン作業が苦手です。
原因としては、保育の場面が「あたたかみ」を重視するために徹底して手書きにこだわっている部分が多いからだと言えるのですが、昨今ではどうしてもパソコンの使用が必須となっているものも少なくありません。
それを、不慣れな人がこなそうとするから余計に時間がかかってしまうのです。

 

そこで、パソコン作業に慣れた事務専用の職員を配置すれば、保育士の負担や時間の無駄がグッと軽減されるのではないでしょうか。

 

連絡帳は現場保育士にとって必須となりますが、定期的に出される「おたより」や壁面の工作は、必ずしも保育士でなければ作れないものではありません。
できるところは分業することで、保育士は保育現場に専念できる環境を作ることができれば、潜在保育士を引き込むチャンスとなるのではないでしょうか。