保育士の裏側

元保育士が綴る保育士のなり方や仕事内容から人間関係など裏側をお伝えします。

保育士の復職or資格取得を支援する貸付事業とは?免除の条件は?~兵庫県と神戸市の場合~

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待機児童問題は、改善するどころかより深刻になる一方、保育士の確保を早急に進めていく必要があるようです。

 

様々な理由から潜在保育士となっている人が多数いる昨今、「どのようにしてその人たちを現場に引き込むか?」というところに主眼が置かれています。

 

しかし、潜在保育士には、潜在保育士になった理由が存在しています。
人間関係と並んで大きな問題となっているのが、お金の問題です。

 

保育士になるにも、また、保育士として仕事を始めるにあたっても、金銭的に先立つものがどうしても必要となるのです。

 

どうも、この事態は国や地方自治体としても由々しきことだとの認識があるようで、ついに、無利子・無担保の貸付事業に乗り出すまでになりました。

一言で「貸付事業」と言っても様々なサポート事業があるようです。

 

…あれ?ちょっと待てよ?(゜-゜)

私事になってしまいますが、最近、大学のころの奨学金をようやく全額返還したばかり。
完済後、開口一番に「奨学金とはいえ、借金は借金だからしない方が良いに決まってる!」なんて言ってしまっていたくらい(^^;
月に数万円のこととはいえ、その額を10年ほど毎月支払い続けるというのは、フツーのサラリーマンの私には、なかなかもって大変なことだったのです。

 

その経験があるにも関わらず、何故、今回の貸付事業を紹介するに至ったのでしょう?

 

いわゆる「借金」とも、どうも一味違うこの制度。
今回は、保育士の現場復帰を後押しする存在となり得る「保育士確保のための貸付事業」を、私が保育士登録している兵庫県を例としながらご紹介します。

 

 


保育士確保のための貸付事業とは

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保育士確保のための貸付事業は、平成27年に厚生労働省が公表した「保育士確保プラン」の中の具体的な施策の1つとして行われることとなりました。
すべては、継続的に保育士を確保することで、待機児童解消化プランの確実に実施するためのものとなっています。

 

貸付には、保育施設が対象になっているものと、保育士そのものが対象になっているものがあります。

 

施設側が対象になっているものとしては、保育補助者を雇用するための費用を貸し付けるというものです。


保育士資格取得を目指す人を保育補助者として雇用する場合に、その給与・諸手当などの経費を借りることができるのです。


その貸与される期間や金額などは自治体によって多少の違いはあるようですが、1人を雇用する場合に概ね年額200万円を最大で3年間借り受けることができるのです。

 

他にも、保育士や、保育士を目指す人のための貸付事業もいくつかあります。

 

保育士修学資金貸付事業


厚生労働省が発表した保育士確保プランによると、児童福祉法第18条の6に規定する指定保育士養成施設に在学する人を対象に、修学資金を貸し付けるというものです。
修学にかかる金銭的負担を軽減することで、質の高い保育士の養成確保を目的としています。

 

月額5万円以内を2年間受けることができるほか、初回には入学準備金として20万円以内、卒業時には就職準備金として20万円以内をそれぞれ加算します。


就職準備金


こちらは、保育士確保プランにはっきりとした記載は無いものの、貸付事業を行う地方自治体には必ずと言って良いほど用意されています。

 

当該の都道府県や市町村内で保育士として就職や復職が決定した人を対象に、勤務に必要とされる経費を貸し付けるものです。
内定した保育園が遠方の場合に転居の費用としたり、勤務に必要な衣類などの購入費用にあてることができます。

 

保育士登録してから一定の期間が経過していることや、週20時間以上勤務することが決定しているなど、貸付条件があるようです。

貸付限度額は1人1回40万円までとなっています。


未就学児を持つ保育士に対する保育料一部貸付


当該の都道府県や市町村内で保育士として就職や復職が決定し、なおかつ保育園などを利用している未就学児の子どもを持つ人のためのものです。

 

月額27,000円を上限として、保育料の半額以内を1年間貸し付けます。

 

ただ、この27,000円は、借受人1人に対しての上限金額となります。
つまり、未就学児の子どもが1人であっても、複数であっても、この金額や貸付の期間に変わりはありません。


未就学児を持つ保育士の子どもの預かり支援事業利用料金の一部貸付


長いですが、これが正式名称となっています(^^;
「未就学児を持つ保育士に対する保育料一部貸付」との違いも気になるところですね。

 

こちらは、保育園などの利用に加えて、ファミリーサポートセンターやベビーシッターなどの子どもの預かり支援事業を利用する人を対象に貸し付けます。


保育園などで勤務するにあたって、早朝勤務や時間外保育などに従事するためにこれらの制度を利用するための人のものとなっています。

 

年額123,000円を上限として、子ども預かり支援事業を利用した料金の半額以内を最大2年間貸し付けます。

 

この利用した料金には、実際に利用料金の他、入会金やその他にも事業利用にかかる必要経費も含まれています。


貸付金の免除条件は?


図書館の本も友達のゲームも、何でも「借りたら返すもの」が前提となっていますよね。
当然ながら、これらの貸付事業にかかるものも例外ではありません。

 

これじゃ、私が経験した「奨学金返還地獄」と、変わりないじゃないか!?と思われるかも知れませんね(;´∀`)

 

しかし、保育士確保のための貸付事業には、全てのパターンにおいて全額免除になる条件が設定されています。

 

概ね2~5年間となっていますが、既定の年数以上勤続することで、返還の必要が無くなるのです。


また、一旦退職したとしても、退職後1か月以内に他の保育施設などで勤務を開始すれば、継続して勤務しているとみなされるのです。
それ以上の条件は特にないので、比較的容易にクリアできそうですね。

 

さらに、業務に起因する心身の故障によってお仕事が難しくなった場合にも、全額免除となることがあります。


あまり考えたくはないものの、保育の現場は、入って勤務してみなければ実際のところが見えにくい部分もあります。
こういった、万一の際にも備えられると考えると、安心して申し込むことができるのではないでしょうか。

 

兵庫県・神戸市の場合は?

 

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では、実際のところはどうなっているのでしょうか?

個人向けの貸付事業に関して、兵庫県と神戸市を例にとってみましょう。

 

神戸市の場合

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政令指定都市となっている神戸市の場合、神戸市内に住民登録をしているというだけでこの貸付事業の対象となり得ます。

 

貸付事業自体や諸条件・貸与額ともに、全国的に展開されているものと大きな開きはないようです。

 

ただ、申込に際しては独自の様式が必要となりますので、問い合わせ先となっている神戸市私立保育園連盟のホームページなどをご確認ください。


兵庫県の場合

 

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兵庫県下に居住または勤務している、神戸市に住民登録をしている人以外が対象となります。

 

こちらもまた、貸付の諸条件や貸与額に大きな違いはないようです。

 

特筆するとすれば、保育士修学資金の諸条件がなかなか厳しいことでしょうか(^^;
「学業優秀」といっても、具体的にどれぐらいの人を指すのかはどこにも記載がありませんし…保育協会ならではの規程などがあるのでしょうか?

 

また、就職準備金が、有効求人倍率によって半額にまで落ち込む可能性があるというのも、何とも複雑です。
全国的に見て、特に兵庫県で保育士が不足しているという場合にのみ40万円となるようですね。

 

こちらもまた、申し込みに際しては神戸市とも違う様式が必要となりますので、兵庫県保育協会に問い合わせた方が良さそうです。

 

貸付の利用はこんな人におすすめ!

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一言で言い切ってしまうのならば、保育を仕事としたいすべての人にこの制度はおすすめだと言えるでしょう。

 

保育士資格取得を目指す人はもちろん、潜在保育士から復帰するにも何かと出費が伴います。

 

安心して学業に専念すること然り、保育の仕事を始めるうえで必要となるものも多数あります。
特に、出産・育児で保育現場を離れていた保育士にとっては、自身の子どもの保育をどうするか?ということが避けて通れない課題となります。

 

その経済的な負担を軽減し、修学や就業をスムーズなものとするのに心強い存在となるのでないでしょうか。

 

また、「貸付」という名前こそ付いていますが、実質的には給付も同然というのも大きなポイントとなるでしょう。
一定の期間、保育に従事しなければならないという条件はあるものの、それをクリアすることで返還の必要はなくなります。


私自身が経験した奨学金返還にかかる大変な思いは、これらの貸付事業に関しては心配なさそうです。

 

保育を仕事とすることに高い志を持つ人にとっては、強力な味方となることでしょう。

 

貸付の申し込み方法は?


兵庫県の場合は、神戸市であれば神戸市私立保育園連盟が窓口となり、それ以外の市町村の場合は兵庫県保育協会が担当の窓口となっています。


既に勤務希望先の保育園があったり、実際に保育園などに勤務している場合には、主任級以上の保育士に聞いてみるのも良いでしょう。

 

他の都道府県を見ても、概ね、政令指定都市は市の社会福祉協議会などが窓口となり、中核市や他の市町村は都道府県の保健福祉担当部署に申し込みを行う場合が多いようです。

 

また、貸与に伴う条件や金額・期間なども、若干の違いがあるようですので、要確認です。

 

さらに、申し込みを行うものによって、申し込みの様式や必要な添付書類が異なってきます。
書類が過不足している場合には、審査の対象とすらならない場合もありますので、十分に気を付けたいところですね。